・Atmospheric Chemistry and Physics (ACP)の新着論文(http://www.atmos-chem-phys-discuss.net/11/28319/2011/acpd-11-28319-2011.html
要約だけ試訳

キセノン133とセシウム137福島第一原子力発電所から大気に放出――ソースタームの判定、大気拡散、堆積
要約
2011年3月11日、日本の本州の太平洋岸からおよそ130kmの沖で地震が、続いて大きな津波が起きた。それに伴う福島第一原子力発電所電源喪失が最悪の事態となり、大量の放射性物質を大気に放出することになった。この研究で私たちは、2つのアイソトープ――希ガスのキセノン133とエアロゾルの形のセシウム137――の放出物を判定している。そのアイソトープには互いに異なる大気中での放出特性と放出挙動がある。高さと時間に応じて4月20日までの放射性核種放出を判定するために、私たちはまず、燃料の在庫量と文書化された事故の時系列表に基づいて放出率を推測した。この推測はその後、大気輸送モデルFLEXPARTの結果と日本、北アメリカ、その他の地域にある数十のモニタリングステーションからの測定データを組み合わせた逆モデルによって改善された。私たちは大気放射能濃度測定と、セシウム137に関しては、堆積容量測定を用いた。キセノン133に関して、私たちは放出総量が16.7(不確定の範囲で13.4-20.0)エクサベクレルだとわかっている。それは原子爆弾の実験と関連のない放射性希ガスの史上最大の放出である。最初のキセノン133の強い放出がかなり早くに、きっと3月11日の協定世界時の6時の地震と緊急停止直後に、始まっていたという強力な証拠がある。原子炉1から3の全在庫量の希ガスが、2011年3月11月から15日のあいだ空気中に放出されていた。セシウム137に関して言うと、その逆モデルの結果から放出総量が35.8(23.3-50.1)ペタベクレル、つまりチェルノブイリの試算放出量のおそよ42%だとわかっている。私たちの結果が示しているのは、セシウム137放出は3月14、15日がピークであったが、12日から19日まで全体的に高かった。まさに4号機の使用済み燃料プールに水をかけ始めると、セシウム137の放出量は桁違いに減少したときのことである。これは、放出が損傷した原子炉の炉心からだけでなく、4号機の使用済み燃料プールから生じていたことを示し、水をかけたのは効果的な対策であったことを確証するものである。私たちはまた、日本だけでなく北半球全体の放射能雲の拡散や堆積パターンを調査している。一見、西向きの風が事故のあいだ吹いていたのは運が良いようにみえるが、私たちの詳細な分析からはそれとは別の姿が浮かび上がる。まさしく3月14、15日のセシウム137最大放出の最中とその後に、そして3月19日の強い放出があった時期も同じく、その放射線プルームが東日本上空を移動した。東日本では雨によって地表に大部分のセシウム137を残すことになった。そのプルームはすぐに北半球全体に、3月15日に北アメリカ、3月22日にヨーロッパへと拡散した。概して、日本やそこから離れた場所でシミュレートし観測されたキセノン133とセシウム137の濃度は、定量的に一致していた。結局、私たちの試算によると、6.4テラベクレルの、つまり4月20までの全放射性降下量の19%のセシウム137が日本の陸地に堆積し、その残りの大部分は北太平洋に降り注いだことになる。ほんの0.7テラベクレル、つまり全放射性降下量の2%が日本以外の陸地に堆積した。